脳梗塞とは
脳梗塞は、脳の血管が血栓や動脈硬化で閉塞し、脳の一部が虚血に陥った状態です。虚血になった領域によって、様々な症状が出現します。虚血により壊死してしまった脳細胞は取り戻すことができませんので、時間との勝負で血液の再灌流を急ぐ病気です。1秒間に200メートルの神経線維が壊死していってしまうと言われています。
急性期治療は病院に入院して行うことがほとんどです。脳梗塞の可能性が高い場合にはすぐに入院可能な病院へと転院していただきます。
退院後は再発予防とリハビリが治療目標となります。再発予防としては原因となる不整脈や動脈硬化の予防を行います。またリハビリも日常生活レベルを維持するために必要となってきます。
虚⾎になった部位によって症状はさまざまで、例として以下のような症状がみられます。
- ⽚側の⼿⾜が動かしにくい・しびれる
- ⾔葉が出にくい、呂律が回らない
- 顔の⽚側が下がる
- 視野が⽋ける、⾒えづらい(一過性であっても脳梗塞の初期症状である一過性黒内障という病気のこともあります)
- ふらつき、歩きにくい
なんかおかしいけど様子を見ていました、とおっしゃられる患者さんもいらっしゃいますが、脳梗塞の急性期治療は時間との勝負です。上記の症状に似ていても脳梗塞ではないこともあります。しかし、脳梗塞であれば手遅れになってしまうこともありますので、『何かおかしい』と思われたら、すぐに受診されてください。
後遺症について
脳梗塞の後遺症は、虚⾎になった脳の領域とダメージの程度によって異なります。
代表的には以下が挙げられます。
- 運動⿇痺:⼿⾜に⼒が⼊らない、入りにくい。ワーラー変性という遅発的に脳梗塞発症領域の末梢の神経の変性が進行し症状が増悪することがあります。(後述します。)
- 感覚障害:しびれ、触った感覚が鈍い。視床痛という痛みが残存する。
- ⾔語:⾔葉が出にくい、理解しにくい、発⾳しづらい
- 嚥下障害:飲み込みにくい、むせやすい(誤嚥のリスク)
- ⾼次脳機能障害:注意⼒・記憶⼒の低下、段取りが難しい、疲れやすい
後遺症は「完全にゼロにする」ことが難しい場合もありますが、適切なリハビリと内服管理で、⽣活のしやすさを⼤きく改善できることがあります。
当院では、患者さまの状態と⽣活背景を踏まえ、必要なリハビリや連携先(通所・訪問など)を整理し、無理なく続けられる形を⼀緒に考えます。
退院後に出てくる「不安」や「困りごと」に対応します。
当院で行う治療
当院は、急性期治療を大きな病院で受けられた患者さまが、退院後に安心して通えるクリニックとして、主に以下を行います。
再発予防(原因への対策)
脳梗塞は「急性期の治療が終わったら終わり、退院したら終わり」ではなく、再発を防ぐことが最重要です。原因として多いのは、不整脈(特に⼼房細動)や動脈硬化です。
患者さまの背景に合わせて、内服治療や⽣活習慣の調整を⾏います。
- 不整脈(⼼房細動など)の評価・管理
- 動脈硬化リスク(⾎圧、脂質、⾎糖など)の管理
- 服薬の継続と調整
- 外来リハビリ
退院後フォロー
退院後に出てくる「不安」や「困りごと」に対応します。
- 症状の変化の確認(しびれ・ふらつき・言葉など)
- 生活上の注意点の整理(再発サイン、受診目安)
- リハビリ計画や介護サービス利用の相談
リハビリについて
脳梗塞の回復には、早期からのリハビリ継続が重要です。退院後も、体の動きだけでなく「日常生活の動作」「言葉」「飲み込み」「集中力」などを含めて、段階的に取り組みます。
- 運動機能:歩行、バランス、手の動き
- 日常生活動作:着替え、食事、入浴、家事
- 言語・嚥下:発声、会話、飲み込みの訓練
- 脳の働き:注意・記憶・段取りの訓練
当院では、患者さまの状態と生活背景を踏まえ、必要なリハビリや連携先(通所・訪問など)を整理し、無理なく続けられる形を一緒に考えます。
ワーラー変性
ワーラー変性とは
脳卒中により脳神経細胞が壊死します。その脳神経細胞から出ている軸索という神経繊維が脳神経細胞に接続されなくなったために変化(変性)してくる現象です。脳卒中後、数時間から数日以内に変性が始まります。脳卒中後の変化として憂慮すべき変化(劣化)であり、リハビリによりこの劣化の進行を緩徐にすることが可能と考えられています。
*脳卒中とは脳梗塞、脳出血、およびくも膜下出血の総称です。昔、CTやMRIなどがなかった時代に、脳に何かが卒って症状が起きたのだろうとして脳卒中として呼ばれていた名残です。
ワーラー変性のプロセスは以下の通りです。
初期損傷
脳卒中で脳の一部への血液供給が失われ、脳神経細胞に壊死が引き起こされます。
軸索変性
脳神経細胞が壊死すると、軸索(脳神経細胞から続く神経繊維)の部分が脳神経細胞から切り離されます。それにともない神経線維に変化(変性)が起こります。梗塞後数時間から数日以内に始まるプロセスです。
再生
脳梗塞などで壊死し失われた脳神経細胞は瘢痕形成やその他の要因によって阻害され、再生が制限されます。しかし、この脳神経細胞から切離された神経線維は頭蓋内から脊髄、そして末梢に至るまでの線維です。末梢神経系では再生が可能であり、再成長する可能性があります。
機能的影響
脳卒中後のワーラー変性は、接続された構造の劣化を引き起こす可能性があり、その結果、障害が広がります。 たとえば、運動を司る領域の脳梗塞では脳神経細胞から切り離された軸索の変性により、さらなる筋力低下や麻痺を引き起こす可能性があります。
電気刺激療法による脳卒中後リハビリについて
脳の「回路」が途切れるワーラー変性
脳卒中が起きると、損傷した脳細胞から手足へと伸びる神経の「電線(軸索)」が、根元から切り離されたように変性してしまいます。これをワーラー変性と呼びます。電線が傷むと、いくら頭で「動かせ」と思っても信号が筋肉まで届きません。さらにはこの末梢神経線維の変性による麻痺の悪化も見られます。
電気刺激が「電線の再建」を助ける
この途切れた回路を修復するのに有効なのが、最新の電気刺激療法です。
タイミングの同期: 患者さんが「動かそう」とする瞬間の刺激、もしくは神経線維の根部に外部から電気刺激を与えます。
脳へのフィードバック
電気で筋肉が実際に動くことで、足からの「動いた!」という感覚信号が脳へ逆流します。
回路の強化
「脳からの命令」と「足からの報告」が一致することで、眠っていた神経回路が再建され、ワーラー変性の影響を最小限に抑えながら運動機能を呼び起こします。
リハビリ頻度
この手法により筋力だけでなく、歩行速度や歩行の質が大きく向上することが示されています。単に足を動かすだけでなく、「自分の意志と電気を同期させる」リハビリは、脳の再学習を促す強力な手段となります。
1.リハビリの頻度
1日のメニュー: 特定の筋肉に対して、それぞれ150回ずつ電気刺激を伴う運動を行い、合計で約50分間実施しています。
ポイント: 短期間に高頻度で「自分の意志」と「電気刺激」を同期させることで、脳に新しい回路を覚え込ませる(学習させる)狙いがあります。
2.神経の回復に必要な「反復」
脳卒中後の麻痺(ワーラー変性を含む)からの回復には、「質」だけでなく「量(反復回数)」が非常に重要です。
脳の可塑性: 脳が新しいネットワークを作るには、数百回、数千回という正しい反復運動が必要です。
現実的な頻度: 入院リハビリでは毎日(週6~7回)行うのが理想的ですが、外来や在宅の場合でも、週2~3回以上の実施が推奨されることが多いです。
3.自宅での活用と継続
最近では、病院だけでなく自宅で毎日使用できる小型の電気刺激装置(IVESなど)も普及しています。
日常生活への組み込み: 1回20分程度のトレーニングを、歯磨きやテレビ視聴の間など、生活の一部として組み込むことで、リハビリの「総量」を確保しやすくなります。
歩行時の使用: 散歩の際に装置を装着し、足が上がるのを助けながら歩くことで、より実用的な歩行訓練が可能になります。
頻度の考え方
リハビリの頻度は、「多ければ多いほど良い」というのが現在のリハビリ医学の一般的な考え方ですが、大切なのは「疲れすぎない範囲で毎日コツコツ続けること」です。
筋肉を鍛えるというよりは、「脳と神経の電線を繋ぎ直す作業」ですので、少しずつでも頻繁に信号を送ってあげることが回復への近道となります。
【木曜限定】最先端の電気刺激リハビリテーション 外来受付中
「もう一度、自分の足で。
スムーズな一歩を取り戻す」
脳卒中後の下垂足や麻痺でお悩みの方へ。 当院では、患者様の「動かしたい」という意図と電気刺激を精密に同期させる、最新の外部トリガー式電気刺激療法を導入しています。
ワーラー変性(神経の断裂)に立ち向かい、脳と足の「眠っていた回路」を繋ぎ直す一歩を、私たちと一緒に踏み出しませんか?国家資格保持者による専門外来です。
当プログラムの特長
「意志」に呼応する刺激: セラピストが動きのタイミングを逃さずサポート。脳の再学習(可塑性)を最大限に引き出します。歩行の質を改善: 筋力アップだけでなく、つまずきにくい、疲れにくい「実用的な歩行」を目指します。専門スタッフによる集中ケア: 1対1のオーダーメイドリハビリを提供します。
コース詳細
実施日: 毎週木曜日(完全予約制)
時間: 1枠 50分(集中して取り組める最適な時間設定です)
料金: 16,000円 / 回
お申し込み・お問い合わせ
「足首の動きを改善したい」「歩行速度を上げたい」「手の巧緻性を取り戻した」など、まずはご相談ください。
かい脳神経外科・救急クリニック
044-863-9990
ご予約はクリニック受付で承ります。
※専門スタッフによる評価に基づき、各個人の麻痺や痙縮の程度に合わせた最適な刺激療法やリハビリ内容をご提案いたします。
よくあるご質問
Q1.脳梗塞は完治しますか?
虚⾎で壊死した脳細胞は元に戻らないため、「完全に元通り」を⽬指すのが難しいケースもあります。ただし、リハビリで機能が改善したり、⽣活の⼯夫でできることが増えたりすることは⼗分にあります。加えて、再発予防で将来のリスクを下げることがとても⼤切です。
Q2.退院後に通院は必要ですか?
必要です。脳梗塞は再発予防が⾮常に重要で、不整脈や動脈硬化など原因の管理、服薬の調整、症状の変化確認を継続して⾏います。
Q3.リハビリはいつまで続けるべきですか?
回復のスピードや内容は個⼈差があります。⼀定期間で⼤きく改善する⽅もいれば、継続で少しずつ安定していく⽅もいます。「今の課題」と「⽣活で困っていること」に合わせて、適切な頻度と⽅法を決めていきます。
Q4.どんな症状が出たら救急受診が必要ですか?
⽚側の⿇痺、⾔葉の出にくさ、ろれつが回らない、急な視野障害、強いふらつきなどが突然出た場合は、脳梗塞の可能性があります。ためらわず救急受診してください(時間との勝負です)。
Q5.薬はずっと飲み続ける必要がありますか?
多くの場合、再発予防のために継続が必要です。⾃⼰判断で中⽌すると再発リスクが上がることがあります。飲みにくさや副作⽤が⼼配な場合は、遠慮なくご相談ください。
